彼女の選択

友人が試練と向き合っている。

最愛のご主人が厄介な病に罹ったのだ。


生死に関わる病ではないものの、「ならいいじゃん」というわけにいかない類の病。

 

彼女は違う県に住んでいて、毎日毎週連絡を取るタイプではない。
でも、私たちは海外の特殊な環境で知り合っていて、互いの仕事っぷりもよく知っている。だから悪い所も丸ごと受け入れた上で、100パーセント信頼しあっている。

 

彼女は今も闘っている。

 

不安に押しつぶされることなく、本当は押しつぶされてるのかもしれないけれど、自分の理想に向けて進むことを止めない。どんなに心と体がきつくても。

これが正解なのかわからない、と言う。


でも彼女のことだから、考えて、考えて、考えて、決めたのだ。

私が同じの立場だったら…確実に何も手につかなくなってしまっていただろう。
彼女も私と同様、子供がいない、ご主人のことも深く愛している。
でも愛と依存とは違うのだ。

 

試練はみんな順番に平等に起きる。
どんなに恵まれた人の上にも起きる。
選択権はない。
選択できることは、試練をどう生きるか、だけ。

 

今日、彼女から連絡があった。
寄り添うけれど、それでも前に進む。
それが彼女の選択。

 

私は彼女のことなら何でも知っているはずだった。
責任感が強く、自分を犠牲にしても人の期待に応えようとする。

 

 でも、いつからこんなに強くなったんだろう。

 

「私に見本をみせて」と彼女に言った。
どうしてもダメな時には私たちがいる。

 

「わかった、見せるから見てて」
彼女は力強く私に答えた。